大判例

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最高裁判所第二小法廷 昭和29(オ)890 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人山田作之助、同岩崎康夫の上告理由第一点について。

論旨は、本件買収計画樹立当時の自作農創設特別措置法三〇条による未墾地の買

収は、原判示のように当時の緊急な食糧増産の必要に応ずるためではないと主張し、

また、原判決の説明は、本件買収計画を違法でないとするについて明確を欠ぐとい

うのである。

昭和二二年一二月法律二四一号による改正前の自作農創設特別措置法三〇条一項

には「又は土地の農業上の利用を増進するため必要があるとき」の字句はなかつた

のであるが、同法が農地の買収売渡のみならず未墾地の買収をも規定している趣旨

は、自作農の創設と同時に食糧の増産をも目的としていたものと解せられるのであ

つて、この点に関する原判示に違法はない。また、原判決は、本件土地は開墾して

甘藷類の栽培に適するのみならず、果樹園として開墾するに最も適する土地である

旨を判示しており、原判決に明確を欠ぐ点はない。論旨中に違憲を主張する部分も

あるけれども、要するに法律の解釈適用の当否を論ずるに帰し、その主張は違憲に

名を藉りるに過ぎない。論旨は理由がない。

同第二点について。

論旨は、被上告人が自ら買収計画の一部を取り消すことは違法であり、その取消

は無効であると主張するのであるが、上告人は本訴を提起して右計画の取消を求め

ていたのであつて、被上告人が右計画の一部について本訴係属中その違法を認めて

これを取り消したからといつて、それだけで取消処分を違法とし無効と解すべき理

由はない。のみならず、上告人は原審で右取消後の残りの区域について計画の取消

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を求めており、右取消処分の違法を主張しなかつたのであるから、原判決が取消の

効力について判示しなかつたのは当然である。論旨中違憲の主張は、実質上法令違

反の主張に過ぎずその理由がないこと右説明のとおりである。

同第三点について。

論旨は、原判決は未墾地買収計画の樹立が農地委員会の法規裁量に属するか自由

裁量に属するかを判示していない違法があるというのであるが、法規裁量と自由裁

量の区別は、要するに、行政処分に対する法の拘束の態様による区別であり、いず

れにせよ処分が法令の拘束に反しない限り違法とすることはできないのであつて、

原判決は本件買収計画か法令に違反しない旨を判示しており、所論のように、法規

裁量か自由裁量かを判示しなければならないものではない。論旨は原判決は本件買

収の必要性について判示していない違法があるというのであるが、原判決は、その

必要性についても判示していること判文上明かであつて、論旨は理由がない。

同第四点について。

論旨は、原判決は上告人の条理違反の主張に対して判断を遺脱しているというの

である。「開拓適地選定の基準」が関係行政機関に対する権限行使の指示であつて

法令ではなく、この基準に反したからといつて直ちに計画が違法であるといえない

ことは原判示のとおりである。若し買収計画が基準に反しひいて法令の趣旨に反す

ることがあれば、計画を違法としなければならないことはいうまでもないが、原判

決が本件計画を違法とすべき理由がないことをるる説明しているのは、本件計画に

所論の条理違反のないことを判示したにほかならないものと解すべきである。論旨

は理由がない。

同第五点について。

論旨は、原判決は理由齟齬の違法があるというのであるが、原判決は所論のよう

に、開墾適性がある以上常に未墾地買収が違法でないとは説明していない。たゞ本

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件未墾地は、諸般の条件から見て開墾し甘藷類の栽培に適しており果樹園とするこ

とにも適しその買収は自作農創設特別措置法三〇条の趣旨に反しない旨を説明して

いるのであつて、所論のような理由齟齬はない。論旨は開拓適地選定基準で定める

傾斜以上の傾斜のある本件土地を買収することは違法であるというのであるが、原

判決は「傾斜十五度を超える部分は階段畑構築により急傾斜の害を或程度解消する

ことができ……」と説明しており、開拓適地選定基準に反したからといつて直ちに

開墾不適地とはいえず、本件買収計画を違法とはいえない。論旨は理由がない。

同第六点について。

論旨は処分庁が自己の処分を取り消すについては、時期的制限及びその内容につ

いての制限がある旨を主張するのであるが、上告人は本訴を提起して計画の取消を

求めており、右取消によつて上告人は何等の不利益を受けるものではないから、少

くとも上告人に対する関係では、右取消を違法とすべき理由はない。論旨は理由が

ない。

同第七点について。

論旨は、原判決は黒竹畑と柑橘畑の利害得失について判示していないと主張する

のであるが、原判決は、当時の法律の趣旨が食糧増産の要請から出たものであつて

柑橘畑、甘藷畑として開墾するため買収することが右法律の趣旨に合するものと認

めたのにほかならない。裁判所は処分が法令に適合しているかどうかを判断しなけ

ればならないが、国民経済上いずれが有利であるかを判断すべきものではない。論

旨は理由がない。

以上説明のとおり論旨はすべて理由がないから本件上告はこれを棄却することと

し、民訴四〇一条、八九条、九五条に従い、裁判官全員一致で主文のとおり判決す

る。

最高裁判所第二小法廷

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裁判長裁判官 栗 山 茂

裁判官 小 谷 勝 重

裁判官 藤 田 八 郎

裁判官 谷 村 唯 一 郎

裁判官 池 田 克

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